虚無と無意味と無駄と俺。
4月某日
雨が降っている。
窓からは傘をさして歩く人がちらほら見えるし、天気予報では雨マークが踊り、机上のAlexaに聞いても雨天であるデータを無言で差し出してくる。
間違いなく雨だ。私は雨粒を見ず、濡れることなく雨であると確信している。
シュレーディンガーだってぐうの音も出ないだろう。
関係ないが、最近うちのAlexaは冷たい。
話しかけても答えてくれない。
いくら機械といえども無視されるのは心にくるものがある。
再起動したら直った。
むっちゃ喋る。お前そんなに喋るのか。
コロナ旋風吹き荒れる昨今。
私も例外なく影響を受けているのであるが、幸い大学生という身分であるので、生活に大きな支障は出ていないものの、私が現在通っているはずだった大学も授業開始が延期され、オンラインでの授業が実施されるという旨の連絡がはいった。
つまり、ハチャメチャ暇なのである。
私が受験期にあれだけ欲していた時間がこうもあっけなく手に入るなんて誰が予想していただろうか。
とにかく時間が有り余っている。
とにかく無意味な毎日を送っている。
朝は10時に起きる。厳密にいえば、7~8時に起きて、時計を確認し、7~8時だと理解したうえで、更に惰眠を貪る。
コロナというバックボーンがなければどうみてもニートなのだ。
だが、10時に起きたからと言って、することがあるかと言えば無い。
起きてからも無意味な時間だけが過ぎてゆく。寝ていたほうがよっぽど有意義かもしれない。
そんなこんなで時計は12時を指そうとしている。
あることに気が付いた。
飯がない。
昼に食う飯がない。
大学の食堂がコロナ対策を施して営業していたため、私は毎日の食事を学食で済ませていた。
今日は生憎の雨。
大学へ向かおうと思えば向かえる。しかし、飯を食うためだけに向かうにはあまりにも億劫なタスクだ。
冷蔵庫は当然スッカラカンである。
「ごはん、買わんといかんなあ」
そんなことを呟いた刹那、手に取っていたのは財布ではなく掃除機であった。
これに関しては何故だか全くわからない。
ワンルームの部屋で掃除機を爆音で転がしながら何周も行脚している途中に買い物の存在を思い出した。
「買い....もの........?」
私は自我を取り戻した。
そうだ、買い物だ。
掃除機をかなぐり捨て財布を手に取る。
家を飛び出し、ほどなくしてファミリーマートに到着する。
「飯なんて食えれば何でもいい」なんてスカした思考を携えて家を出たものの、昼食の目星はついている。
カップ麺売り場で衝撃を受ける。
蒙古がない。
蒙古 do not exist there.
困った。
さあて、どうしようか。
刺激の強いラーメンしか受け付けないお口になってしまった。
カップ麺売り場を後にしてコンビニエンスストアを練り歩く。
こうして歩いてみると、コンビニとは意外と何もないものだ。コンビニエンスの名折れである。
そんなことを考えてて、目に飛び込んできたひときわ異彩を放つ商品。
満腹大盛にんにく醤油ラーメン
アホだ。
にんにくが入ってればウマい。味が濃ければウマい。量が多ければウマい。
アホのウマウマ三か条。
そんな商品誰が買うのか。
無論私だ。
今思えば、このラーメンだけしか買わないのにカゴに入れてレジに持って行ったのが恥ずかしい。
そもそもこのラーメン単体で食うのも良くない。
栄養士に「まあ、野菜は入ってますしねw」と鼻で笑われる。
一汁三菜クソ喰らえ。汁でも菜でもない。
表現するとすれば、一爆。
三角食べという文化を捨て、1対1でラーメンと向き合い、おっ始めるられるステゴロ。
そして帰ってきてから気づいたが、晩飯を買い忘れた。
面倒なドジを踏んだ。
またコンビニへ赴かなければならない。
これが不要不急の外出でないと信じたい。
とにかく昼飯だ。
電子レンジを開け、ラーメンをセットする。
500Wで7分。長。
にんにくのキツいにおいが立ち込める。
どうやら完成したようだ。
スープを啜り、麺を喰らう。野菜を頬張る。
なんだか豪快な食事風景だが実際はチマチマ食べている。
というのも、初めて二郎系ラーメンを食べたときにパーカーに付いた油汚れが落ちなかったことに非常にショックを受けたのが原因で、ラーメンを派手に啜ることが出来なくなった。
なんとも間抜けなパブロフだ。
とにかくラーメンはうまい。
味が濃くて、にんにくがあって、量が多い。
うむ、うんまい。
食い終わったところでやることがないので、仕方なくキーボードをバコバコ打ち込んでいるわけだ。
さあ、明日は何をしよう。
学生アパートにニンニク臭い男が一人。